或る夜の話(※勝家利家大人向け※)










戦が長引けば、当分自国に帰ることは出来ない。
当然、妻にも会えないのだ。
だが会えずとも、そういった欲求は必然的に出てくるもので。
その為に戦場にはそれを担う者が連れて行かれるのも
何ら自然なことである。









今日も長い一日だった。夜が来て周囲は静まり返っている。
これが日中は激しい戦をしていたかと思うと、余りにも差がある。
しかし、また明日からも戦は続く。当分は終わらないだろうということを
彼―柴田勝家―も、彼の主である織田信長も、心得ている。

勝家は考えていた。
戦のことは心配はあるまい。我らならば必ず勝てるだろう。
ただ気になるのは別のことだった。長期戦にはつきものである、ことだ。

自分はもうさして若くない。その気になれば抑える方法も
心得ていた。しかし、と。
あやつは若い。言うなれば男盛り、欲求も一番激しい時期なのでは、
と勝家は思う。
なればあやつはどうするのか、と無意味にも考えてしまう。
普通ならば小姓を呼ぶ。それが当然だろう。

こんなことを心配するなど馬鹿馬鹿しい、あやつはもう子供ではないのだ、
と自分の親心を少し自嘲気味に笑ったが、それでもまだ何かが引っかかっている
ことには気付かない振りをした。










その夜、勝家の元を訪ねてきた者が一人。
それは先程彼がまさに思考を巡らしていた人物。



「・・叔父貴」

前田利家だった。



「どうした利家、こんな時間に」
「・・・いや、ちょっと眠れなくてよ・・・・」
「眠れない・・・?」

眠れないとはらしくない、と勝家は思った。
自分もそうだが、利家もお世辞にも神経が細いとは到底
言い難い形(なり)をしている。そんな利家が眠れないとは
何かあったのだろうか、と少し心配にもなる。

「何だ、柄にもなく緊張しておるのか?」
「べべべっ・・別に緊張なんかしてねぇよ!」
「?・・・・そうか。明日の戦が心配で眠れんのかと思ったが」
「だから、別にそんなんじゃねぇって!」

勝家の言葉に利家は何故か動揺気味に答えた。
その様子は誰が見ても何処かおかしい。
誰よりも彼を見知った勝家ならばすぐに気付いただろう。

「なれば利家、わぬしは一体何をしに来たのだ」
「・・・・・」

利家は俯いて黙り込む。まるで何かを言い澱んでいる風だった。

「叔父貴・・・・・」

意を決して言葉を紡ごうと上げた顔を見て勝家は驚く。

「何だその様な・・・まるで」

頬を微かに赤らめさせ話す様はまるで、恥らう女子の様だと
口に出しかけてやめた。何を考えているのだ、と自分でも
分かっていたからだ。

そんなに顔を赤らめて熱でもあるのか、と言った。
しかし次に利家から発せられた言葉は勝家の想像を超えていた。


―――俺をどうにかしてくれ


勝家は目を見開いて一瞬固まっていた。
が、すぐに正気に戻り利家を咎める。

彼の言わんとした意図が分かっていたからだ。

「何を言っておるのだ利家!悪ふざけが過ぎるぞ!!」
「悪ふざけじゃねぇっ!」
「なれば何故かようなことを言うか!」
「だってよ・・!!」

凄い剣幕で捲し立てても利家は食い下がる。
付き合いきれぬと背を向ければ、背後から小さな声が聞こえた。

「・・・だって叔父貴・・・、最近俺おかしいんだよ。昼は何ともないのに・・・
夜になると駄目なんだ・・・・身体が眠ってくれないんだよ・・・!」

原因は勝家にも分かる。

「小姓を呼べばよかろう」

淡々と言われ、利家は少々腹を立てたようだった。
半ば投げやりに、吐き捨てるように言った。

「呼んだよ!呼んだ!!でも駄目だったッ・・だからっ・・・俺は此処に来た・・のに」

声がどんどん小さくなっていき、聞こえなくなった。
変わりに聞こえたのは小さな嗚咽だった。

「・・・利家」

振り返れば俯いて肩を震わせる利家が目に入った。
床にはぽたぽたと滴が落ちている。
泣いているのか、と思った。そして自分が泣かせたのか、と思うと
自分に腹が立った。

「・・・っでも・・叔父貴・・・・は相手に・・してくれないんだろ・・・っ
・・たら、信長様の・・所に行・・・・っ」

利家はそう言って立ち上がろうとする。




「待て」

気が付けば勝家は彼の腕を掴んでいた。咄嗟の行動だった。

「離せよ叔父貴ッ!」

しかし利家は掴まれた腕を振り解こうと腕を強く引く。
すると勝家はその力に引かれるまま腕をやり、逆に利家を床に転ばせた。

ダンッ

「ってぇ・・!何するんだよ叔父貴ッ!!」

怒りを顕わにして利家は叫ぶ。起き上がろうとしても
勝家に肩を押さえられて起き上がれない。腕一つで
押さえられているだけなのにこの力は何だ、と利家は思った。
そうしてもがいていると頭上から声が降って来る。

「そんな顔をして何処へ行こうというのだ」
「うるせぇなっ元々・・」
「襲ってくれと言っているようなものではないか。
そんな奴をみすみす外に出す訳にはいかん」

どんな顔をしているか分かっているのか、と咎めた。
顔は赤く、涙の所為で目は潤んでいる。そんな状態で
他人と会えば、何をされるか分かったものではない。

そこまで考えて、ふと勝家は思う。
何故彼の腕を取ったのか、と。
襲われてもおかしくない状態の利家を外に出したくないと思ったのは
親心で片がつくかもしれない。
だがあの時は違う。彼の腕を取った時、自分は何も考えてはいなかった。
勝手に手が出ていたのだ。実際、利家がどんな様子なのか分かったのは
腕を掴んだ後だ。そんなものは取ってつけた理由でしかない。

思い当たるのは一つだけ。


『信長様』


利家がそう言った時、一瞬だが自分の中に黒い物が生まれた気がした。
このまま利家を行かせたくない、大殿である信長の目に触れさせたくないと。

ああ、そうか。
自分に腕を取らせたのは親心でも何でもない。

ただのつまらぬ嫉妬だ。


勝家は理解した。そして自分の狭量を恨めしく思った。
自分を頼って来た利家の言を無視したかと思えば、
くだらぬ嫉妬心で利家を引き留めてしまうとは。
しかも泣かせてしまったとあれば余計に質が悪い。
利家に申し訳なく思いつつ、勝家は言葉を紡いだ。

「利家・・・」
「・・・・・」
「すまぬ」
「!・・・っ」

謝罪を口にした途端、利家は驚いて勝家を見た。
が、すぐにふいっと顔を背けてしまう。

「儂はどうにも疎いらしい」
「・・・・?」
「わぬしが儂を頼って来たにも関わらず、それに気付かず
追い返そうとしてしまうとはな」
「・・・・・」

そこまで言って、勝家は肩を押さえていた手を放してやる。
妨げるものがなくなって利家は身を起こすが、顔はまだ下を向いたままだ。
それでも、もう立ち去る気はないのかそこでじっとしている。

「利家」

と名前を呼ぶと、少しだが顔を上げた。
もう涙は出ていなかったが、目元が赤くなっている。
これでは、と勝家の脳裏を先刻考えていたことが過ぎった。

「な・・んだよ・・・」

利家は少々勝家を睨みつけながら答えた。

が

「ぅわっ・・!」

身体が前に倒れたかと思うと、勝家の腕に受け止められる。
必然的に勝家に抱き留められる形になってしまい、利家の顔は
今まで以上に赤くなってしまう。

「すまなかった」
「・・っ///////」

再び謝罪の言葉を口にされ、あれこれ言いたかった言葉など
どこかに飛んでしまった。

「・・・・叔父貴の・・・馬鹿・・やろ・・・」

かろうじて吐いた言葉は余りにも熱を帯びていて、
それがとても恥ずかしくなって、利家は肩口に顔を埋めてしまった。
勝家はその様子がとても可愛いと思ったことは口に出さずにおいた。
また機嫌を損ねて逃げられたら敵わない。

折角こうして利家に触れることが出来ているのだ。

「不心得故・・・優しくは出来ぬかもしれぬが・・・・」

本当にいいのか、と念を押してみる。

返答はない。

ややあって、答えの代わりに勝家の背中におずおずと腕が回された。
肯定ととっていいのだろう。勝家も利家の身体を抱き返してやった。







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「んっ・・!」

ビクリと利家の身体が跳ねる。勝家が彼の中心に手を伸ばすと
そこは仄かに形を変えていた。着物を掻き分け、直に触れてやれば
忽ち硬度を持ち始め勝家の手の中でふるえている。

「やっ・・・叔父貴ッ!」

すぐに反応を示してしまった自分を恥じてか、利家は咄嗟に
勝家の腕を押さえようとする。しかし勝家は触れることを
やめてはくれず、次第に手を動かし始めた。

「流石に・・元気だな」
「だ・・・って・・叔父・・貴・・・ぁあっ」
「好いか、利家」
「・・ちいち・・・聞くな・・よ!」
「だが聞かなければわからぬ」
「ッあぁ!」

すっかり熱を持ち硬くなった其処は、勝家の愛撫によって
解放へと導かれている。利家にとっては、少し触れられただけで
こんなに反応してしまうのが恥ずかしい一方、待ち望んでいた
行為を漸く与えて貰えるのだと思うと、嬉しさでどうにかなってしまうようだった。
勝家は勝家で、自分の腕の中で僅かな愛撫にも感じて身体を震わせる利家を見て
彼がどれ程切羽詰っていたのか、そしてどれ程自分にされることを欲していたのかが
分かり、それを心地良く思っていた。


「・・待っ・・・もっと・・ゆ・・・っくり」
「構わぬ・・・出せ」

性急に扱かれて、限界が近くなる。それをやり過ごそうと
利家がもう少しゆっくり、と口に出せば、逆にもっと激しくされた。

「あ・・・ぁっ・・ダメだ・・・って!」
「よい・・・」
「よくなっ・・・ぁ・・もっ・・・・イ」


ドクンッ


「――――――あぁッ!!」

利家の身体が一際激しく跳ねたかと思うと、勝家の手の中に
自身の熱を吐き出した。



出されたものは色濃く、手に収まりきらずに着物を汚していた。
それを見て、勝家はこんなに溜めていたのか、と言いたげに利家を見た。

「・・・・・はっ」

その視線を受け、肩で息をしながら、利家はキッと勝家を睨む。

「っ・・叔父・・貴の所為だろっ・・・叔父貴が早くやる・・から」
「好くなかったか・・」
「そう・・じゃないけど・・・・やっぱり恥ずかしいんだよ・・!」
「恥ずかしい?・・ならばこれで止めるか」
「え・・・」

恥ずかしいと抗議すれば、やめるかと問われて
つい思いがけず不満の声を出してしまった。
利家の反応を見て、勝家は笑みを浮かべる。

「冗談だ・・・ここまで来て止められる程、強靭な精神はしておらぬ」
「なっ・・・ひでぇ・・っ・・からかうなんて・・・」
「すまぬ。わぬしの反応が一々可愛いのでな」
「叔父貴ッ・・・!」
「そういう反応が可愛いのだ」
「―っ・・・」

クチ・・・

「・・っ!?」

勝家が先程利家が放ったものを彼の入り口に塗り込める。
そしてそのまま指を挿入し始めた。

「な・・・ぁっ・・叔父・・貴っ・・・」

異物の進入に痛みと不快感を覚え、抗議の声を上げる。
しかしそれはあっけなく無視され更に奥へと入り込んでくる。
それでも潤いを与えられた為か、さしたる抵抗もなく受け入れてしまう。
内壁にも入り口と同じように塗り込んでやれば、随分と楽に指を動かせるようになった。

「・・ふっ・・・ぅ・・あ・・・」

中を探るように指を動かして、そうして見つけた内部の微かなふくらみを
指の腹で押してやる。

「―――ッッ!?」


その瞬間、利家の身体を電撃のような衝撃が駆け巡る。

「・・な・・・に」
「此処がわぬしの好い所だ」
「え・・・・・・ぁ・・・ッ・・!」

再び同じ場所に触れられ、利家は仰け反った。
よほどの快感なのか先程熱を放った中心が、また疼き始めている。

「っ・・や・・だ・・・それや・・め・・・っ」

正直、よすぎて辛かった。気を抜くとすぐにイってしまいそうになる。
強過ぎるか、と問われ頷けば、そうか、と言って止めてくれた。


「・・ぁあ・・・ッ」

気が付けばいつの間にか指が増やされ、自分の内部を犯していた。
痛みなどはとうに無く、そこは快感しか生み出さなくなっている。
くちゅくちゅと湿った音が辺りに響き、それが余計に利家に快感を与える。

かなりの快感を与えられた身体は、それでも貪欲さを増していき
もっと激しい快感を求め始めた。

「・・叔・・父貴っ」

熱を含んだ声で勝家を呼ぶ。それはとても甘美な響きを持っていて
彼の耳に心地よい刺激を与えた。

「どうした?」
「・・・俺・・もっ・・・我慢できね・・・ぇ」

勝家が問えば、利家は己の限界を訴え始めた。その強請る姿が可愛くて
暫し見入っていると、焦らされていると思ったのか利家が再び口を開く。

「は・・やくっ・・・」

くれよ、と利家は言った。その目は先程のように潤んでいた。

「・・・いいのか」
「いいから・・っ・・・早くッ」
「分かった」

勝家は利家の身体を横たわらせ、片足を抱え上げる。
利家が感じる様を目の当たりにし、先程から自身も熱を持ち疼いていた。
彼は熱くなったそれを取り出すと、先端を利家の秘部に宛がった。
そのままゆっくりと腰を前に進め、自身を埋め込む。


「・・っぁあ!」

先程とは全く比べ物にならない圧迫感が利家を襲う。
指で解されたとはいえ、その大きさは指の比ではない。
きつい挿入の為か、利家は必死で勝家の身体を押し返そうとした。

「痛・・いッ・・・叔・・父貴っ・・・」
「力を抜け・・利家」
「ム・・リだ・・・って」
「言う通りにしろ・・・・息を吐け。・・・そうだ」
「・・は・・・っ」

利家は言われた通りに息をする。そうして緩んだ隙を逃さず勝家は再び腰を進めた。
ずぶずぶと入り込んでくる熱い楔を、それでも今度は受け入れようと頑張った。

漸く全てが埋め込まれ、一息つく。しかし限界まで拡げられた内部は
彼を締め付ける度に断続的な痛みを生み出す。その痛みをやり過ごそうと
利家はあれこれ思案しようとしたが、勝家はそれを許してはくれなかった。

「・・動くぞ」
「ぅあ・・」

そう耳元で囁かれたかと思うと突然、ずるり、と抜かれる感触がした。
それだけでも充分な快感なのに、今度は入り口近くまで引き抜いたそれを
再び奥まで戻される。

「ぁ・・・ああッ」
「・・利家」
「ゃ・・やぁ・・・お・・じきっ」


「・・・くっ」
「ひ・・ぁあ・・・・んッ」

何度も何度も挿入を繰り返され、しかも的確に感じる所を突いてくる。
既に熱を取り戻した中心は、透明な蜜をトロトロと零していた。

「そ・・こ・・・ぃやだ・・あっ」
「嫌ではなく好いのだろう、利家。今度は止めてはやらんぞ」
「・・・くぅ・・あぁっ・・や・・め」
「此処が好きか」
「ふぁあっ・・・」

先程探り当てた一番感じる所を擦ってやれば、彼は悲鳴に近い声を上げて仰け反った。
いつもの彼からは想像もつかぬその姿、それが堪らなく愛おしく、それをさせているのは
自分なのだと、その事実は勝家を酔わせる。
彼は結合を更に深いものにしながら、利家のものに手を絡め上下に扱き始めた。
前も後ろも攻められて、快感の波が利家を襲う。刺激を与えられた中心からは
蜜が止め処なく溢れ出し、勝家の手を濡らした。

「あ・・ぁ・・・ンあ!」
「利家・・・我慢せずとも良い」
「ふっ・・ぅあ・・・んんッ」

がくがくと揺さぶられ、利家は必死で勝家にしがみついた。
そうして感じる確かな存在が心地良かった。

今、自分はこうして勝家に抱かれている。

ただそれだけで良い、満たされた気分だった。
握り締める手に更に力を込める。

「・・・んぁっ・・あっ・・いぃっ」
「・・っ利家」

限界の近づく利家の最奥を抉る。


「・・あ・・・あぁぁっ―――――」

甲高い声を上げ、利家は熱を放った。
身体からは力が抜け、ずるずると落ちていく。
勝家はそれを逃すまいと、利家をきつく抱きしめた。





自分を抱く確かな温もりを感じながら、利家の意識は遠退いていった―――











+++++++









利家は眩しさで目を覚ました。眠ってしまったのだろうか。
何時の間にやら朝が来ている。

何故か身体がだるい・・・。寝ぼけた頭で昨夜の記憶を辿ってみる。
そうしてうんうん唸っていると不意に声を掛けられた。


「起きたか、利家」
「・・叔父貴・・・・・・―――――!!」

目の前には勝家がいた。彼を見た瞬間、全てを思い出した。
昨日あったことの何から何までが、利家の中に呼び起こされて顔が真っ赤になる。

「・・何だ、朝から顔が赤いな」

淡々と言う勝家。まるで昨日の事など何も無かったかのようだ。
変に話題にされても困るが、何も無かったように振舞われるのも・・と思う。


寂しい。


そんな女々しい感情に支配されている自分がいる。

――自分は心から勝家を欲していた。だが彼はそうではなかったのだろう。
当たり前と言えば当たり前だ。自分が一方的にやって来たのだから・・。
勝家は自分を抱いてくれた。けれどそれはきっと一種の同情であったのではないか――

そのような考えが利家の頭を駆け巡る。何故こんなに卑屈になってしまうのかと、
自嘲気味に笑う。

「・・・昨日はすまぬ」
「・・っ!」

突然の謝罪の言葉に、利家は驚きを隠せなかった。
何で謝る、謝るなら自分の方だと、思った。それとも謝る程彼は後悔しているのか。
だが次いで発せられた言葉は利家の予想とは違った。

「つい加減を忘れた・・・・身体は辛くはないか」
「え・・・」

紡がれたのは利家の身体を案じる言葉。
この一言で、先程まで彼の中にあった不安など何処かへ行ってしまった。
たった一言だけれど、その一言に隠されている暖かさが利家には嬉しかった。

「・・で、どうなのだ」

未だ答えない利家にいい加減業を煮やした勝家が再び問う。

「あ・・あぁ、辛くはねぇぜ。少しはだるいけど」
「そうか・・・」

利家の口から辛くはないと聞いて勝家は安心したように呟いた。
その行為が自分への気遣いから出たものだと思うと嬉しくなる。
それが知らず知らずの内に顔に出ていたらしい、

「・・・何をにやついておる」

気味が悪い、と指摘された。そこまで言うかと少し落ち込んだが
利家は素直な感情を口にした。

「嬉しかったんだよ」
「何がだ」
「叔父貴が俺の身体を心配してくれんのが」
「当然であろう・・」

言葉はそっけない風だったが、その様子は何処と無く照れている様にも見える。

「叔父貴照れてんのか?」
「馬鹿言っとらんで支度をしろ!」

少しからかいを含んだ調子で聞けば、厳しい口調で返された。
だがそれが照れ隠しであることは利家にも分かる。

「へいへい・・・分かったよ」

拗ねた様に言ってみたものの、顔は笑ってしまっていた。
だがそれをまた勝家に咎められたら堪らない、と
そそくさと支度を整え、その場を後にしようとする。

「利家」

去り際、勝家が声をかけた。利家はやはり咎められるのかと、決まり悪そうに
其方を振り向く。しかし返ってきた言葉はその類ではなく。

「辛くなったらまた来い」


その言葉を聞いた一瞬、何かが引っかかった気がした。
が、すぐに彼の言わんとする意図が分かり、一瞬の疑問など何処へやら
利家の顔が真っ赤に染まる。突然のことに何と言って良いか分からず暫しの沈黙が続く。

だが、やがて

「―――あぁ」

小さな声でそれだけ答えると彼はふい、と顔を背け、部屋から出て行った。


その姿を勝家は黙って見送っていた。




+++++++






「辛くなったら―――か」

一人自嘲気味に勝家は呟く。まるでそれ以上のことはないのだと
自分に言い聞かせるかのように。自分の感情を隠すかのように。



自覚しなければ良かった。そうでなければこのような奇妙なものに
侵されることもなかったろう。どんなに平然を装おうとしてももう遅い。
気付かぬふりは出来そうにない。


「・・・好いておるのか、儂は」

息子同然の者に対するそれではない。その意味は明らかだった。





決して知られてはいけない。







だが利家の手を取ったあの時から
一度芽生えたそれは心の奥底で燻るばかり。



決して消えることはなかった。












終












何かもうホントすみません。でも書きたかったんです、勝利でエロが!!(言いやがったコイツ)
だから滅多に書かない小説の類のものにも挑戦・・・そして撃沈。何コレ何コレ・・・どうしようもない。orz
戦前後にこんなことしてていいのでしょうか。そこら辺よく分からないので適当捏造です;;
上と下の文では随分なタイムラグがある為、最初とか全然覚えてない・・・。←最悪。
要は叔父貴が利家を「好き」だって自覚したんだぜ!ということが言いたかったんだと思います。
もしかしたら続くかもしれません。気が向いたら・・。買Iイ。
とにかく利家受が好きなので、色々発掘していきたいと思ってます。性懲りもなく。

読んでくださってありがとうございました。多謝。